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マンション投資の鉄人

第二十二の鉄人   東北地方在住 瀬谷 潤

お金は、それ自体は半製品。使ってはじめて完成する〜すべての富は、株か不動産に行き着く


現在ぼくは、1LDKが8世帯のアパート一棟。区分所有のワンルームマンション4件。計12室の単身者用物件を所有し、不動産賃貸業を営んでいるのですが、かつて、破綻状態にある4件の不動産物件を抱えながらも、2件のワンルームマンションを無借金で購入するという極めて稀な体験をしています。
今回は、そのときの体験を通して学んだことのひとつを、お話しさせていただきたいと思います。

話は、ぼくが一億を超える多額の債務を抱え、二進も三進もいかない状況に追い込まれていた頃から始まります。
当時のぼくの所有資産は、3件のワンルームマンションと4LDKの自宅マンション(この4物件は、その後競売にかけられて失うことになります)。それと現在も所有している8世帯のアパート一棟でした。
バブル景気は完全に崩壊し、担保物件の債権者である金融機関は、「不良債権処理」の国是の下、債務超過・返済困難に陥ってしまった、いわゆる「不良債権」に対し、「やれ売れ」「それ売れ」「早く売れ」と、売りが売りを呼ぶ完全なデフレスパイラル状態に陥っていた時代でした。

ぼくの物件も例外ではなく、物件価格の下落は目を覆いたくなるほどで、すべての物件を売却したとしても七千万になるかならないか・・・・。対して債務総額は一億を超えているという、とんでもない借金を背負っていました。
悪いことは重なるもので、その後も物件価格の下落だけにとどまらず、家賃の下落や、給料の減少。空室の発生などで収入は下がる一方です。
今まで蓄えてきた貯蓄を切り崩しながら、どうにか返済を続けている、いわば「自転車操業」という状況でした。

「何とかしなければ、このままでは破綻する・・・・。とにかくこの状況を打開しなければ・・・・。でもどうやって・・・・・。」

ここでぼくは、一発逆転を狙い、あるサイドビジネスを実践することを決意します。(当時ぼくが実践したサイドビジネスの具体的な内容は、著書『住宅ローン地獄からの生還』の中で詳しく述べております)
ぼくの思惑は完全に当たり、その後5年ほどの間に、破綻している4件の物件の追い金を支払いながらも、ぼくは一千万円を超えるお金を貯めることができました。
しかしこの頃から、絶好調だったぼくのサイドビジネスにも、少しずつ影が見えはじめてきます。
ぼくのシステムでは、家からの固定電話からしか利用できず、当時は携帯電話に切り替わる過渡期で、客層の大半を占めていた若い世代が、どんどん携帯電話に移行してしまい、売り上げが下がり始めてきていたのです。
それと同時に、高額の利用料金が社会問題化し、連日のマスコミ報道もあり、このビジネスに対する規制や批判は強まる一方でした。

「どちらにしても、このビジネスはそう長くは続けられないな・・・・」。そう悟ったぼくは、このビジネスの「仕上げ作業」に入ることを決意します。
ぼくが実践したこのビジネスの「仕上げ作業」とは、利益という財産を、不動産という財産に変えて(つまり投資して)、生涯に渡り家賃という収益を得るためのシステムを構築する。という作業でした。
それはぼくが、お金に対しこのように考えるからです。

「お金というのは、それ自体は半製品。お金は使ってはじめて完成する」

儲けたお金は「半製品」なのだから、儲けただけでは、このビジネスは成功したとはいえない。
一千万以上もの「儲けたお金を使う」ことにより、つまり「儲けたお金を完成させる」ことで、はじめてこのビジネスは成功したことになるのではないか。ぼくはそう考えたのです。
勘違いしないでいただきたいのですが、ここでいう「お金を使う」とは、「お金を浪費する」という意味ではありません。
お金を浪費するのは簡単です。確かに一千万円といえばものすごい大金です。でもよく考えてみれば、一万円札で千枚しかないんです。
この国は、お金を浪費させようという誘惑に満ち満ちています。いいわいいわで、一万円札一枚一枚を、エヘラエヘラと浪費していれば、千枚しかない一万円札は、あっという間になくなってしまうことでしょう。
ですから「お金を使う」とは、「儲けた(貯めた)お金を何に使うのか?」つまり「何に投じるのか?」という意味です。

ぼくは、以前読んだ本の中に書かれていたある一文を忘れることができません。というか、もしぼくがこの言葉に触れていなかったなら、今所有しているワンルームマンションはなかったと思います。
ぼくに、この言葉を教えてくれた、その本の著者の先生に対し、今でも本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ぼくが大変感銘を受けたその言葉とは

「資本主義において、すべての富は株か不動産に行き着く」

ぼくは、この「資本主義の普遍の原則」に忠実に従いました。
つまり、利益という、「富を不動産に行き着かせる」ことにより、一千万からの「お金を完成させよう」と考えたのです。
ぼくにとって、得た利益を不動産に投じ、「お金を完成させる」ということは、「サイドビジネスの成功」を意味することに他なりません。
要するに、儲けたお金を、「お金を生み続けるシステム」。つまり不動産という財産に形を変えて、生涯に渡って家賃をもらい続けることのできるシステムを構築し、初めてこのビジネスは成功したといえる。

事業や投機やギャンブルなどで巨額のお金を得ることができたにも関わらず、その後使い果たしてしまう人がいますが、それは「稼いだお金を、半製品のまま浪費してしまった」結果だと思います。
儲けたお金を完成させていれば。つまり、富の最終的な行き場所である不動産に行き着かせてさえいれば、少なくとも使い果たしてしまうことはなかったはずです。
もしぼくが、このビジネスで得た利益を、もっと大きな利益を得ようと欲を出し、偶然の利益を狙って不動産以外の物に「投機」していたら、間違いなくすべてを失っていたことでしょう。
では何の不動産に投じるのか?
狙うは、「アジアの入り口」福岡と、「北の拠点都市」札幌のワンルームマンションを現金で購入する。
迷いはまったくありませんでした。

その資金を、破綻している物件の借金返済に充てていれば、一物件くらいは救えたのではないか?
そういう考え方もあるかもしれません。正直、それも考えました。しかし、既に400万程度の価値にまで落ち込んでしまっているワンルームマンションに、一千万以上もの大金を投じて救おうという行為は、明らかに経済的合理性を欠いています。

こうしてぼくは、あるサイドビジネスで得た資金で、福岡と札幌にある中心地立地。地下鉄徒歩圏。バブル期の高級ワンルームマンションを、それぞれ現金一括払いで購入することができました。
新築当時の売り出し価格は、どちらも1,600万を超えていましたから、2件合わせれば三千万を軽く超えていた物件であり、仮に新築時、当時流行っていた「フルローン」や「オーバーローン」で購入していたら、支払い総額は五千万を超えていたことでしょう。それを一千万プラス諸費用だけで購入できたのですから、もう何も言うことはありません。

結局このビジネスは、トータルで5年ほど続きました。
それまで届け出などは一切必要なく利用できたシステムだったのですが、情報料を回収代行する通信会社が、この手の番組すべてを届け出制に変えてしまった時点で、「見切り千両」という商売の格言通り、ぼくは潔く廃業しました。
しかしこのビジネスで得た利益を、ワンルームマンションという、「金のタマゴを産み続けてくれるニワトリ」に投じ、「得た利益を使い切った」ことにより、得たお金を完成させることができた。つまりこのビジネスを完結させることができた訳ですから、満足感でいっぱいであり、このときのぼくに、このビジネスに対する未練など微塵もありませんでした。

このビジネスを行っていた5年間は、破綻している4物件のローンも滞りなく返済していくことができました。
当然、債務総額も少しずつ減ってはきていたのですが、それ以上に物件価格が下落してしまい、債務超過という状況は更に悪化していました。
しかし、このビジネスを廃業せざるを得なくなった。つまり、副収入が完全に絶たれてしまったこの時点では、いくら無借金のマンションを2件も手に入れたとはいえ、破綻している4物件のローン返済の「追い金」を支払う余裕は既になく、賃貸経営全体として見てみれば明らかに破綻状態でした。
破綻状態にある4物件を何とかしなければ、毎月利益を出しているアパートも、現金で購入している2件のワンルームマンションもすべて失い、自己破産するしかない。

「何とかしなければ・・・・・・。でもどうやって・・・・・・・。」

ここでぼくは、4件の物件に関わるすべての債権・債務関連について、じっくりと調べてみました。
破綻しているのは、4件の物件に関わる債権・債務に過ぎず、決してぼく自身が破綻している訳ではない。
だったら、破綻している物件だけを破綻させてしまえば、それで済むだけの話ではないか?
このとき、住宅ローンに関する債権・債務関連の本を読みあさっていたぼくに、あるアイデアがひらめきます。

「そうだ、この方法ならどうだろう。この方法なら、自己破産をすることなく、アパートと無借金の2件のマンションだけを残し、破綻している4件の物件だけを破綻させることができるのではないか?」

こうしてぼくは、ある手法を使って、「破綻している物件だけを破綻させていく」、ということを実践していくことになります。
億を超える多額の債務を抱え、絶体絶命の状況に追い詰められていたぼくが選択した、債務者起死回生の「最終手段」とは?・・・・・・

*福岡にワンルームマンションを購入したときのエピソードは、ぼくのブログの、『高級レストランで不倫カップルが内輪もめ(?)〜物件は女性の視点で選ぶ』の項でも述べておりますので、こちらの方も是非ご覧になってみてください。


著書紹介
『住宅ローン地獄からの生還』 マイブックル

『住宅ローン破綻 競売があなたを救う〜実践者が語る最後の解決策』 早稲田出版

オフィシャルブログ 『瀬谷流プチ不動産投資日記』









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