上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の取引に係る売却損を、損失が生じた翌年以降の3年間にわたって、上場株式等に係る譲渡所得の金額から控除できるという制度のこと。
平成15年1月1日に導入された新制度である。
具体例で説明しよう。
ある個人投資家が平成16年1月1日から平成16年12月31日までの間に、さまざまな上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託を売買した結果として、1年間で1,000万円の損が出たとする。さらに同じように上場株式等の売買を続けた結果、平成17年に200万円の利益、平成18年に300万円の利益、平成19年に700万円の利益が出たとする。
この場合、各年の「上場株式等に係る譲渡所得の金額」は次のように算出される。
平成16年:売却損が1,000万円(譲渡所得はゼロ、損失1,000万円を翌年に繰越)
平成17年:売却益200万円と損失1,000万円を相殺(譲渡所得はゼロ、損失800万円を翌年に繰越)
平成18年:売却益300万円と損失800万円を相殺(譲渡所得はゼロ、損失500万円を翌年に繰越)
平成19年:売却益700万円と損失500万円を相殺(譲渡所得は200万円)
このように、平成16年に生じた売却損を平成17年・18年・19年の3年間にわたって持ち越すことができるため、平成17年・18年・19年の納税額が少なく(またはゼロに)なるというメリットがある。
このような「上場株式等の譲渡損失の繰越控除」の適用に関する留意点は次のとおり。
第1に、上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の譲渡損失は給与所得と相殺することはできない。また事業所得・不動産所得と相殺することもできない。
第2に、「上場株式等の譲渡損失の繰越控除」の適用を受けるには必ず確定申告をする。個人投資家が「特定口座(源泉徴収あり)」を選択している場合であっても、「上場株式等の譲渡損失の繰越控除」の適用を希望する場合には、自分で確定申告をしなければならないので注意したい。 |