民法第563条の規定により売買契約における売り主が負うべき無過失責任のこと。
(1)売り主の担保責任
民法では、売り主が責任を果たさない場合には、買い主は売り主の債務不履行責任を追及できると定めている(民法第415条:損害賠償、民法第541条:解除)。しかしこのような債務不履行責任を買い主が追及できるのは、売り主に帰責事由(故意または過失)がある場合だけである。
しかしこれでは買い主の保護に欠け、売買契約への信頼性をそこなうことになりかねない。そこでわが国の民法では、売り主に帰責事由がない場合(すなわ売り主が無過失である場合)であっても、一定の場合には売り主が買い主に対して責任を負うと定めている。このような売り主の無過失責任が「売り主の担保責任」である。
(2)民法第563条による売り主の担保責任
売り主の担保責任のひとつとして、権利の一部が他人に属する場合における売り主の担保責任がある(民法第563条)。
例えば、土地建物を土地1,000万円と建物2,000万円の合計3,000万円で購入したが、実は土地所有権は他人のものであって借地権付きの建物を購入したことに、買い主が契約後に気付いたとする。
この時、この土地の借地権の相場が600万円であったとするなら、この物件の正味の価値は2,600万円であり、買い主は400万円払い過ぎたことになる。また借地権付き建物だと知っていたならそもそも購入しなかったということもありえるだろう。
そこで民法ではこのような場合について民法第563条で、売り主の無過失責任を認めているのである。民法第563条の内容は具体的には次のとおり。
(ア)善意(権利の一部が他人に属することを知らなかった)の買い主は、売り主に対して、代金減額請求、契約解除、損害賠償請求ができる。売り主はたとえ無過失であったとしても、代金減額請求・契約解除・損害賠償請求を拒絶することができない。
(注:ただし契約解除は、事情を知っていれば買い主が買わなかったであろう場合にのみ行なうことができる)
(イ)悪意(権利の一部が他人に属することを知っていた)の買い主は、売り主に対して、代金減額請求はできるが、契約解除および損害賠償請求はできない。
(注:悪意の買い主は、民法第563条では契約解除・損害賠償請求ができないが、売り主に故意過失がある場合であれば、売り主の債務不履行責任を追及することはできる)
(3)権利を行使できる期間
上述の(2)に挙げた民法563条による買い主の代金減額請求権・契約解除権・損害賠償請求権は、買い主が事情(権利の一部が他人に属すること)を知った日から1年以内に行使しなければならない(民法第564条の規定による)。
また悪意の売り主の場合には、はじめから事情を知っていたのであるから、契約の日から1年以内に代金減額請求権を行使しなければならないとされている(民法第564条)。 |