開発許可の基準(全般的許可基準) 【かいはつきょかのきじゅん(ぜんぱんてききょかきじゅん)】 |
都市計画法における開発許可に関して、どの地域でも適用される技術的な基準のこと。
A)趣旨
都市計画法第29条では、開発行為(建築物の建築や特定工作物の建設を目的とする土地の区画形質の変更のこと)を行なうためには、原則として知事(または市長)の開発許可を受ける必要があると定めている。
この開発許可を与えるか否かの基準は、都市計画法第33条と第34条に法定されている。
都市計画法第33条の基準は、全国のすべての地域に適用される基準であり、「全般的許可基準」または「技術的基準」と呼ばれている。
都市計画法第34条の基準は、市街化調整区域内でのみ適用される基準である。
B)全般的許可基準の内容
「全般的許可基準」は都市計画法第33条に列記されているが、具体的には次のとおり。
1)予定建築物の用途が用途地域などに即していること
予定される建築物等の用途が、用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域などに適合していること(都市計画法第33条第1項第1号)。また地区計画が定められていて、地区整備計画が定められているとき(または施設の配置・規模が規定された再開発促進区があるとき)は、予定建築物等の用途などが地区計画等に即していること(第5号)
2)公共施設等との用途の配分
公共施設、公益的施設(学校など)、予定建築物の用途の配分が適正であること(都市計画法第33条第1項第6号)
3)排水施設、地盤の軟弱な土地等における安全措置
排水路その他の排水施設が、下水を有効に排出し、溢水等の被害が生じないように設計されていること(第3号)。 地盤の軟弱な土地、がけ崩れや出水のおそれが多い土地などであるときは、地盤の改良、擁壁の設置などの安全上必要な措置が講じられていること(第7号)。
4)権利者の同意
開発行為を行なう区域(開発区域)内の土地又は建築物等につき、工事の実施の妨げとなる権利を有する者の相当数の同意を得ていること(第14号)。
5)樹木の保全等、緑地帯等、輸送の便
1ha以上の開発行為では、植物の生育の確保上必要な樹木の保存、表土の保全等の措置を講じる(第9号)。1ha以上の開発行為では騒音、振動等による環境の悪化の防止上必要な緑地帯その他の緩衝帯を配置する(第10号)。また40ha以上の開発行為では、当該開発行為が道路、鉄道等による輸送の便等からみて支障がないこと(第11号)。
6)公共空地、道路の接続
道路、公園、広場その他の公共空地(消防用貯水施設含む)が環境保全上等で支障がない規模構造で配置されること。開発区域内の主要な道路が、開発区域外の相当規模の道路に接続すること(第2号)。この基準は、自己居住用の住宅には適用されない
7)給水施設
水道その他の給水施設が、想定される需要に支障を来さないこと(第4号)。この基準は自己居住用の住宅には適用されない。
8)災害危険区域等を含まないこと
「災害危険区域」「地すべり防止区域」「土砂災害特別警戒区域」などの土地を含まないこと(ただし支障がない時は含んでよい)(第8号)。この基準は、自己居住用の住宅と、自己業務用の建築物・工作物には適用されない。
9)資力信用、工事完成能力
開発許可の申請者に当該開発行為を行なうために必要な資力および信用があること(第12号)。工事施行者に当該開発行為に関する工事を完成するために必要な能力があること(第13号)。この基準は、自己居住用の住宅と、一定規模以下の自己業務用の建築物・工作物には適用されない。 |
開発行為 【かいはつこうい】 |
都市計画法上の開発許可の対象となる行為のこと。
1)趣旨
都市計画法では、無秩序な開発を規制するために、宅地開発に対しては知事(または市長)の許可が必要であると定めており、これを開発許可という(都市計画法第29条)。この開発許可の対象となる行為が「開発行為」である。
2)定義
開発行為とは、正確には「主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更」と定義されている(都市計画法第4条第12項)。
ここで「特定工作物」と「土地の区画形質の変更」の意味については、おおよそ次のように定義されている。
ア)特定工作物
コンクリートプラント、ゴルフコース、1ha以上のテニスコートなどのこと(詳しくは特定工作物へ)。
イ)土地の区画形質の変更
宅地造成、道路の新設などを伴う土地区画の変更、農地から宅地への変更などのこと(詳しくは土地の区画形質の変更へ)。
2)の定義に該当しない行為は、開発行為ではないので、開発許可を必要としない。例えば、1ha未満のテニスコートの建設のための宅地造成は、開発行為に該当しない。また建築物を建築する目的で、登記簿上で土地を合筆することは「土地の区画形質の変更」ではないので、開発行為に該当しない。 |
外壁の後退距離 【がいへきのこうたいきょり】 |
第1種・第2種低層住居専用地域では、道路や隣地との境界線から一定の距離だけ、外壁を後退させなければならない場合がある。これを「外壁の後退距離」と言う。
この「外壁の後退距離」は都市計画によって規定される制限である。逆に言えば、都市計画に定めがないならば、第1種・第2種低層住居専用地域であっても、外壁を後退させなくてよいということである。
都市計画で「外壁の後退距離」が定められると、建築物どうしの間に一定の空間がつねに確保されるようになり、日照・通風・防火などの面で良好な環境が形成される。
都市計画で「外壁の後退距離」が定められる場合、その距離は1メートルまたは1.5メートルが限度である(建築基準法54条2項)。 |
買戻 【かいもどし】 |
債務者(または物上保証人)の所有する不動産を、債務者(または物上保証人)が債権者に譲渡し、債務を全額弁済すると同時に債務者(または物上保証人)が債権者からその不動産を買い戻すという制度である。
民法では売買の特約としてこの買戻を規定しているが、実際上は不動産を担保に入れて金銭を得るための手段である(民法第579条)。この買戻を登記する場合には、最初の売買における所有権移転登記に、買戻特約の附記登記を行なう。
この民法上の買戻には次のような条件を満たすことが必要とされている。
1)売買契約と同時に買戻の特約をすること
2)買い主(つまり債権者)が不動産を占有するので、その不動産の使用収益による利益を買い主が取得する反面、買い主(債権者)は売り主(債務者)から利息を取ることはできないこと
3)買戻の代金は、当初の売買代金と同額であること
このように民法上の買戻は厳格な要件が定められているため、実際にはこれよりも要件が緩やかな再売買の予約が利用されることが多い。 |
買戻特約 【かいもどしとくやく】 |
AからBへ物を売却する際に、Aがその物の買戻権(かいもどしけん)を有する旨を合意すること。
具体的には、ある物をAからBへ売却する時点において、「将来その物をAがBから買戻すことができる」という合意を結んでおくのである。こうすることによってAは、将来その物を取り返すことが可能となる。
買戻特約は、融資に用いられることが多い。
例えばBがAに3,000万円を融資するとする。融資の担保がA所有の土地(3,000万円相当)であるとする。このとき次のような形で買戻特約を用いる。
まずAがBに対して、この土地を売る。これによりAは3,000万円を得る(これが金を借りたことに該当する)。そして売買の際に「将来AがBに3,000万円を交付するならばAがその土地を取り返す」という合意(特約)を結んでおく。
このように買い主Bは、土地の所有者となり、同時にBがAに3,000万円を交付する。これは見方を変えれば、Bが土地を担保にとって、Aに3,000万円を貸し付けた、と見ることができる。また合意(特約)に関しては、Aはこの特約を不動産登記簿に付記登記することができる。 |
買戻しの特約 【かいもどしのとくやく】 |
不動産の売買契約と同時に、一定期間経過後売主が代金と契約の費用を返還して不動産を取り戻すことができることを内容とする契約解除の特約をいう(民法579条)。特別の合意のない限り、買戻期間中の不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなされる(同法579条但書)。買戻しの期間は10年を超えることができず、10年を超える期間を定めたときは、その期間は10年とされ、その期間の更新は認められない。また、期間の定めをしなかったときはその期間は5年とされる(同法580条)。買戻しの特約の登記は、買主の権利取得の登記に附記して登記することとされており(不動産登記法59条の2)、この登記をしておけば第三者にも対抗できる(民法581条)。買戻しの特約は担保の一方法であるが、この目的で利用されることは少ない。住宅・都市整備公団等公的事業主が分譲した住宅・宅地等においては、転売防止などを担保するために利用される。再売買の予約は登記をせず、動産もその対象とされ、また再売買代金にも制限がない点で買戻しと異なる。
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解約 【かいやく】 |
当事者の一方の意思表示により、賃貸借、雇用、委任、組合などの継続的契約関係を消滅させることをいう。契約の解除の場合、その効力が過去に遡るのに対して、解約は将来に向かってのみ消滅の効力が生ずるとされているが、民法上は解約と解除が混同して使用されており、明確な規定はない(民法541条、620条、625条3項等)。結局、売買、贈与契約等の非継続的契約関係の解約または解除はその効力が過去に遡るのに対して、賃貸借、雇用、委任、組合などの継続的契約に関する解約または解除は将来に向かってのみ消滅の効力が生ずるということであろう。
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解約手付 【かいやくてつけ】 |
いったん締結した売買契約を、後に解除しうることとして授受される手付をいう。一般にその金額についての制限などはないが、宅建業者が宅地建物の売主の場合には、20%を超えることはできない(宅建業法39条)。解約手付が授受されると、買主からはそれを放棄すれば、また売主からはその倍額を返しさえすれば、契約を解除することができる(民法557条1項)。ただし、相手が契約で定められたことを始めるなど履行に着手すると、手付解除は認められない。解除の方法などは一般の場合と同様であるが、手付額、または倍額のほかに損害賠償を請求することはできない(同条2項)。手付には、このほか証約手付、違約手付がある。
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解約手付 【かいやくてつけ】 |
手付の一種で、手付の放棄(または手付の倍額の償還)によって、任意に契約を解除することができるという手付のこと(民法第557条第1項)。
通常、契約を解除するためには、解除の理由が必要である。
具体的には、「法律上の解除原因の発生(債務不履行、売り主の担保責任)」か、または「契約成立後に当事者が解除に合意したこと(合意解除)」のどちらかが必要である。
しかしわが国では、手付を交付することにより、契約を解除する権利を当事者が保持しつづけるという手法を用いることが非常に多い。
これは、売買契約成立時に買い主が売り主に手付を交付し、買い主は手付を放棄すればいつでも契約を解除でき、手付相当額以外の損害賠償を支払わなくてよいというものである(これを「手付流し」という)。
また売り主も、手付の倍額を買い主に償還することで、いつでも契約を解除でき、手付相当額以外の損害賠償を支払わなくてよい(これは「手付倍返し」という)。このように手付相当額の出費を負担するだけで、いつでも売買契約関係から離脱できるのである。
また判例(昭和24年10月4日最高裁判決)によると、「契約において特に定めがない場合には、手付は解約手付であると推定する」こととなっている。つまり、契約上単に「手付」とされた場合には、反証がない限り、解約手付として扱われる判例が確立している。
宅地建物取引業法ではこの判例より更に進んで、売り主が宅地建物取引業者である売買契約では、契約内容の如何にかかわらず、手付は必ず「解約手付」の性質を与えられると規定している(宅地建物取引業法第39条第2項)。これを解約手付性の付与という。
なお、手付流し・手付倍返しによる契約解除はいつまでも可能ではなく、契約の相手方が「履行の着手」を行なった時点からは、このような契約解除ができなくなるとされている(詳しくは履行の着手へ)。 |
解約手付性の付与 【かいやくてつけせいのふよ】 |
売り主が宅地建物取引業者である売買契約を締結するとき、手付は必ず「解約手付」の性質を与えられるということ(宅地建物取引業法第39条第2項)。
手付には、解約手付、違約手付、証約手付という3種類があるが、実際には圧倒的に解約手付が多い。判例(昭和24年10月4日最高裁判決)によると「契約において特に定めがない場合には、手付は解約手付であると推定する」こととなっており、契約上単に「手付」とされた場合には、反証がない限り、解約手付として扱われる判例が確立している。
宅地建物取引業法ではこの判例よりさらに進んで、売り主が宅地建物取引業者である売買契約では、契約内容の如何にかかわらず、手付は必ず「解約手付」の性質を与えられると規定した(宅地建物取引業法第39条第2項)。ただしこの第39条は一般消費者保護の規定であるので、この制限は売り主が宅地建物取引業者で、買い主が宅地建物取引業者以外の者である場合にのみ適用される。
また、この解約手付性の付与(第39条第2項)に反するような特約であって、買い主に不利なものは無効とされる(宅地建物取引業法第39条第3項)。 |